農作物ギャラリーをひらこう

学  年 5年生
実施時期 5月〜11月
全活動時間 45時間
指導者 山田千津 菊澤 博子 南智明

1 単元目標

○ 打田町の農作物の学習を通して,食べ物の大切さ,食料生産の苦労,技術の素晴らしさに気づく。
○ 自分たちの食生活を見つめ直し,食事のあり方を考え,実践していくことができる。

2 単元について

 5年生では,社会科では農業や水産業などの食料生産,理科では植物の生長や結実の様子,家庭科では食べ物の役割や栄養,調理などが学習内容としてある。これらはいずれも「食」にかかわる内容であり,これらの教科を横断する総合的な学習としてこの課題を設定した。

3 指導計画

・第1次 打田町の農業調査
 ※ 稲の栽培(一人一バケツ)・赤米の栽培
・第2次 調査のまとめ
・第3次 農作物の秘密調べ
 ※ トマト,スイカ,なす,カボチャ,トウモロコシ,キュウリの栽培,たい肥作り
・第4次 食農教育(近畿農政局和歌山統計事務所)
・第5次 中間発表
・第6次 まとめ
・第7次 農作物ギャラリーをひらこう


4 学習活動の記録

○中間発表にむけての各グループの取り組み

【農家訪問グループ】

例1 第2種兼業農家,訪問した家の農業の特徴をまとめる。
 ・主に誰が農業に従事しているか。
 ・収益はあがっているのか。
 ・転作をした理由
 ・転作をした農作物の作り方,仕事ごよみ
 ・農業の苦労,工夫
 ・使っている農業機械
 ・今の農業と昔の農業の変わってきたところ
 ・農家訪問をして,新たにもっと調べたいことを見つける。
 ☆この児童は,農機具をたくさん見せてもらい,その機械代が合計で800万にもなることにとても驚き,なぜ,そんなにたくさんの機械を買って農業をしなければいけないのかを,自分なりに考え,まとめていた。そして,この学習をして,もっと農機具について調べてみたいと今後の課題を見つける。
例2 打田町でたくさん作られているイチジクについてまとめる。
 ・イチジクの仕事ごよみ
 ・イチジクの栽培に関する苦労
 ・なぜ,イチジクの木は,横にのびてぐねぐね曲がっているのか。
 ・イチジクの増やし方
 ・より利益を上げるためにしていること
 ・イチジクを栽培するのに使う機械
 ・今後,目指していきたいこと
 ☆この児童は,イチジクの栽培は,一年を通じておこなわれていること,より高い利益を上げるために有機肥料を使っていること,安心して食べられるものを作るために,農家の人は日々苦労をしていることが心に残ったと感想を書いていた。この学習をして,今度は,夏によく栽培されている野菜のことについて調べてみたいと今後の課題を見つける。

【農協探検グループ】

農協の方に米,その他の農産物について説明を聞く。
 ・化学肥料と有機肥料の違い
 ・打田町で作られている米の品種となぜその米が作られるようになったかという理由
 ・米作りとほかの農作物の苦労の違い
 ・米作りの仕事に関わって,一番大変なこと
 ・その他,打田町で作られている農作物について
 ・施設栽培について
 ・「めっけもん広場」について
 ・農協が栽培を進める農作物について etc・・
 ☆農協探検グループは,事前に聞きたいことをまとめ,きちんと課題を持っていたので自分の一番知りたかったところを中心にまとめることができた。今後の課題は,それぞれ違い,今一番,打田町で増えている梅について調べたいという児童,米の品種について調べたいという児童,輸入によりタマネギが売れなくなったという話から,輸入されている農作物を調べたい,など課題を見つけ,学習を進めている途中である。

【役場探検グループ】

役場の農林経済課の方々から農業全般について説明を聞く。
 ・農林経済課の仕事
 ・農業の仕事に関わって心配なこと,苦労。
 ・農業をする人が減って困ること。
 ・輸入が多くなることの問題点。
 ・米作りの問題点
 ・打田町で農業に従事している年齢層,兼業,専業農家の件数,
 ・転作の問題点etc・・
 
 ☆役場探検グループも聞きたいことをまとめ,きちんと課題を持っていたので,より深く学習ができた。役場の仕事ということで,農協とは違った管轄で地域と関わっていることがよくわかり,新しい発見ができた。たとえば,池の改修,水路,農道の管理,農業に関する知識を高めるために研修会を開く,4Hクラブの運営など,地域との関わりが理解できた。また,環境・公害問題の観点から,ダイオキシン,ビニルハウスの処理(農協にお金を出して引き取ってもらっている)などの問題点も提起してもらった。農業をする人が減ってきて一番困ることは,遊休地(作物を作っていない土地)が増えると,草が増え,草の種がとんで困るなど環境問題へと関連付け学習を深めることができた。このまとめをして,打田町で一番よく売れているいちごについて調べたいという課題を見つけた児童,兼業農家は,どんな農業をしているのか(主に作っている農産物,苦労,工夫)を調べたいと課題を持った児童,米以外の農産物,主に果樹について調べてみたいと課題を持った児童,それどれに次の課題を見つけ,学習を広めている途中である。

【パソコン・図書室探検グループ】

 ※このグループは,パソコン教室や図書室で,自分が調べてみたい課題を,インターネットや書籍で調べ始めている。
 例1 お米の原産地を調べ,どのようにして日本で栽培されるようになったか,現在のお米の品種,無洗米についてまとめる。
 例2 世界のお米の歴史を調べ,日本の現在の米の生産を調べるなかで,1993年,日本が冷害で米不足になり,輸入したことに新しい発見をする。
 例3 輸入されているくだものということで,バナナを調べる。なぜバナナは弓のように曲がっているのか,なぜ,熟したバナナを輸入できないのか,バナナにもいろんな品種があることなどをまとめる。
 例4 稲の生長を詳しくまとめる。稲の花の命は2時間,花びらのない花,ひっそりと短い時間しか咲かない稲の花が,実はお米作りの最大のポイントと,受粉の素晴らしさに気づいたことをまとめる。etc・・
 
 ☆このグループは校外学習にはいっていないが,インターネットで自分の調べたい課題が即座にわかるという利点を活用し,意欲的に学習を深めていくことができる。資料を精選し,どの部分を詳しく知りたいのかをきちんと考えて学習していくことがポイントになっている。


○二学期の取り組み

 二段階目の調べ学習に入っていくので,一学期にまとめた事柄をより深め,わかりやすく発表することに重点をおき,12月に【農産物ギャラリー】を開いた。

 ・一学期に中間発表をして,次に調べたい課題を見つけ、それについて調べ学習を始めた。一学期の時よりも課題を絞り,今回は、自分が調べたい農作物の疑問を,もっと詳しくまとめていくことに重点をおいて取り組むことを課題にしました。その結果,きゅうりを調べた児童は,「なぜ曲がったきゅうりはスーパーで売られていないのか。曲がったきゅうりはおいしくないのか。」 大根を調べた児童は,「大根が苦いのはなぜ。」柿を調べた児童の中には,渋柿は渋くて食べられないのに,干し柿にするとなぜ甘くなるのか。」 しいたけを調べた児童は,「自分はしいたけが大嫌いで,どうしても食べられないけれど,どんな栄養があるのか。」 お米をもっと詳しく調べた児童は,「お米を保存しておくうちに,虫が湧くけれど,その昆虫は害虫なのか,また,その昆虫が湧いた米を食べると体に害があるのかどうか。」 たまねぎを調べた児童は,「打田町はたまねぎの生産が多いが,たまねぎはどこから伝わってきたのか。」 などかなり焦点を絞ってまとめることができた。その後,一人ずつ発表をして一学期に行ったように,全員に感想を書かせ相互評価をした。

 ・12月の「農作物ギャラリーを開こう」に向け第二段階として5つのグループに分け取り組んだ。「お米コーナー」「果物コーナー」「根野菜コーナー」「葉野菜コーナー」「農作物カルタコーナー」の5つのグループに編成し,各コーナーでギャラリーを開けるように各自楽しいギャラリーになるように工夫を凝らすように課題を与えた。 
☆「お米コーナー」
 黒米,赤米,古代米(かおり米)の試食,赤米は,栽培していたこともあり,赤米のもみと白米のもみの違いもわかり,身近なものとなった。黒米は薬米といわれ古代では薬として食べていたようである。試食してみても明らかに普通の白米とは違い,黒く味は苦い事も体験できた。そのほかにも,米ぬかの化粧品,健康食品,お米のコーヒー,お米のお菓子,お米を使ったいろんな商品が開発され,販売されていることもわかった。
☆「果物コーナー」
 糖度計を使いみかんやりんご,柿の糖度を計り甘さを比べる体験をした。柿が一番糖度が高く,甘い柿では17度もあることにびっくりした児童がいた。渋柿を調べた児童は,実際に渋柿をむき,つるし柿にする体験をしてもらうコーナーを設けた。また,和歌山県果樹試験場の方の協力を得て,ブンタン,きよみ,はるみ,ポンカン,八朔,温しゅうみかん,デコポン,ネーブル,だいだい,などたくさんの品種の柑橘類をいただき,中を割って香りを楽しみ試食できた。みかんも品種改良により,たくさんの品種があることがわかりいい体験ができた。みかんを調べていた児童は,世界一大きいみかんであるブンタンを見てとてもうれしかったと感想を書いていた。重さも3キロあり,中身はグレープフルーツに似ていて,皮がすごく厚く白く,ふわふわしているなど,とても楽しく観察,また試食でき楽しい体験だった。
 また,柿も15種類の甘柿,渋柿をいただき,柿の王様と言われる「富有柿」は糖度も高く,色も赤く,本当においしそうだと思った,と感想を書いた児童もいた。同じ甘柿でも形や色が違い,柿も品種改良によって,より甘くおいしい柿を作るために努力している人たちがいることに気づいた児童もいた。
 和歌山県試験場の方からは,「最近果物離れが進んでいる,おやつに果物を食べる家庭が減っている,果物の需要が伸びない中,学習の教材に使ってくれてうれしい。この機会にみかんや柿のよさを知ってもらって,どんどん食べてほしい。」と,とても喜んで協力してくださった。おかげでたくさんの種類のみかん,柿をいただけて楽しいギャラリーになった。
☆「葉野菜コーナー」
 「レタス,白菜の葉は全部で何枚か」のクイズが楽しかったようだ。外側から一枚ずつはがして並べていくと白菜はなんと,全部で84枚もあることに子供達はびっくり!最後の最後まで,葉はだんだん小さくはなっていくが,同じ白菜の形をしている事を改めて発見した児童もいた。
☆「根野菜コーナー」
 たまねぎの皮で色染めをした。たまねぎの皮を煮立て,その中に白いハンカチを入れ10分ほど炊く。その後,ミョウバンを溶かした水であらうときれいな黄色に染まる体験をするコーナーを設けた。また,子供達が育てたおもちゃかぼちゃに顔を描くコーナー,ジャガイモ,サツマイモを使っていも版をするコーナー,など自分達が調べた野菜を使って楽しい体験をすることを課題に取り組んだ。
☆「農作物カルタ」
 みんなの調べた農作物の特徴をカルタにしてまとめました。「曲がったきゅうりも味は同じ」「エジプトの頃は給料として支払われていたたまねぎ」「世界一大きいみかんブンタン」「渋柿が渋いのはタンニンが含まれているからだよ」「山にできるとやまいも,里にできるからサトイモ」などそれぞれの調べ学習の内容の特徴を捉えることを課題にした。

 以上の5つコーナーでギャラリーを開き12月に各クラスで交流した。


5 授業後の児童の感想等

 ・みんなのギャラリーに行って,すごく楽しかったです。赤米,黒米の試食もしました。黒米は薬米といわれるそうですが,どんな病気に効くのか調べてみたくなりました。赤米は今の赤飯に似ていると思いました。稲の穂も少し赤く,ノギというものがついていて,白米との違いがよくわかりました。

 ・糖度計を初めてみました。みかんやりんごの汁をつけて糖度が計れるそうです。みかんも結構甘いことがわかりました。柿はみかんより甘かったです。きれいに糖度が計れて面白かったです。もっとほかの果物の糖度を計りたいと思いました。メロンを調べていたお友達がいたので,今度は甘いメロンの糖度を計れたらいいなと思いました。

 ・白菜の葉が全部出84枚もあるなんて,本当にビックリでした。順番にはがして並べていったら,床が一杯になりました。最後の最後まで白菜の葉は同じなのが面白かったです。色々工夫すれば楽しい体験ができるものだと感心しました。

 ・たまねぎの皮できれいな色染めができるのはびっくりでした。たまねぎの皮は茶色だけれどミョウバンを溶かした水ですすぐと,ビックリすごくきれいな黄色いハンカチに変身! 理科で勉強したミョウバンでこんなになるとは・・・きれいな色染めができてうれしかったです。ほかの野菜でも色染めができるのかなと思いました。今度は,きれいな色染めのできる農作物を調べてみるのも面白いと思いました。

 ・初めて渋柿でつるし柿を作りました。渋柿をつるしておくと渋のもとであるタンニンというものなくなって甘くなるそうです。柿をむいていると手が少しべたべたしたけれど楽しかったです。家に持って帰って風通しのいいところへつるしておきます。

 ・5つのコーナーを廻りました。それぞれ体験コーナーがあって工夫しているなと思いました。今度ギャラリーを開く時は,もっとわかりやすく掲示したり,発表の時の声を大きくしたり,みんなに楽しんでもらえるような事をもっと考えてみたいと思いました。とても楽しい「農作物ギャラリー」でした。また三学期もしてみたいです。


6 成果と課題

(1)学習の成果
 一学期から,バケツ稲の観察を中心にお米の勉強、赤米の栽培も行い,白米の生長と比べることもできたこと,総合のノートに農業,農作物の新聞記事を集め学習を継続しながら自分の課題を見つけさせることができたこと,この農業学習を柱に家庭科,理科環境の学習と多岐にわたり深める事ができたことが最大の成果だと思う。
 二学期に取り組んだ「農作物ギャラリイー」では各自の発表をもとに,さらに自分の課題をより深く知ってもらうために体験活動を工夫したこともいい経験だったと思う。
 自分で見つけた課題を調べていくうちに,疑問に思ったことを中心に調べ学習を深めることができたのも,一学期の中間発表の成果だと感じます。一人ずつがクラスのみんなから感想をもらうことで,今後もこの課題を追求していこうという意欲が湧いた児童も多かった。また,自分が一番苦労して調べたことを知ってもらえてとてもうれしかったと感想を書いた児童もいたように,努力を認めてもらうことにより,一層学習意欲が湧いた事も成果といえるだろう。
 各学級ごとに取り組んだので時間割の調整をする必要もなく,発表も学級間の交流ができ,それぞれに参考にすることもできたのでよかった。また,発表後,家庭で「自分の調べた農作物を使って料理をしてみよう」という事で家庭の協力のもと,アイデア一杯の料理を考え調理した体験もよかった。
 最後にこの総合学習のまとめとして,「自分の調べ学習を通して食生活を見直してみよう!」という課題を考えさせた。その結果,学習のねらいである「自分達の食生活を見つめ直し,食事のあり方を考える」という観点は,ほぼ到達できたと思う。また,NIE学習との関連で,自分の調べた農作物を新聞形式にまとめなおすことにより,一層みんなに理解してもらうために,工夫してまとめる学習を深めることができた。リード文、見出し、絵、写真などレイアウトを考えることにより,一学期からのNIE学習のまとめにする事ができた。

(2)今後の課題と展望
 もう少し時間があれば,「国際理解」の分野に広げ,世界のお米料理,例えばビビンバ、パエリア,タイ米を使った料理,長米を使った料理などにも挑戦できれば面白いだろうと思う。一学期に苦労した児童も,二学期にはずいぶんまとめる事にもなれ,工夫することができるようになったけれど,やはり個人差があることが今後の課題の一つだと思う。しかし,総合学習もその子その子に応じた成長があれば成果と認めていくことも大切なのではないだろうか。